ラクレットチーズの工程を基本とした、おおまかな流れで紹介しています。チーズの種類によって作業が異なる場合もあります。紹介している写真はさまざまなチーズ製造風景です。

① 土と草

土から草が生え、草を牛が食む、牛を優しく世話して、そして乳を搾る、牛が食べた草は、また土へ還って肥沃になる。
牛乳に職人が手助けをして、じっくりチーズが育つ。この過程によって、学舎の牛乳がチーズへと変化していくのです。

② 牛乳

新得農場の牛乳は、量より質を最優先。春のつぼみが膨らみ始める5月頃から、牛たちが新鮮な青草が食べられるように昼夜放牧しています。
牛は山の草地まで歩き、草を食べ、ゆったりと横になる最も自然な形で営まれる畜産方法で育てています。健康的で豊かな草の風味を含んだ牛乳が、夏の特徴です。
新得の寒い冬には、乾燥させた牧草が主な餌となります。放牧草・採草ともに無農薬、無化成有機肥料で育て、より品質の高い乾草を自給飼料としています。乾草は、夏とはまた一味違ったコクのある牛乳の風味となります。
配合飼料は必要最小限にとどめ、遺伝子組み換えのない穀物を搾乳牛には与えています。
何よりも健康な土・草・牛から、より上質で美味しい牛乳が生産できると考えています。

③ 搾乳

搾乳は早朝4時半と夕方4時半の一日2回。搾乳室は、南からの自然光が入るように設計されており、床やコンクリートには炭を混ぜ、環境を整えています。更に、隣接するチーズ工房より高い場所にあり、その高低差を利用した自然流下で牛乳がチーズ工房へと送られます。このようにポンプを極力通さない工夫によって、牛乳を傷めることなくチーズの原料とする事が出来ます。

④ 乳の発酵と凝固

牛乳を低温殺菌後、発酵温度(35℃前後)まで下げ、「乳酸菌などのスターター」を加えます。微生物たちが元気に働けるよう、チーズ工房の床下にも炭を埋め環境を整えています。ある一定の発酵が行われたときに「レンネット(凝乳酵素)」を入れてミルクを固めます。

⑤ カッティングと撹拌

固まり始めた牛乳(カード)をカットするタイミングが、チーズ作りの要と言っても良いくらい大事な作業です。硬さはどうか最良のタイミングを計るため、慎重に見極めます。次第に水分が少しずつ出てきて、カード(凝乳)は小さくなっていきます。この水分をホエイ(乳清)と呼び、乳糖などの栄養素が含まれるため、新得農場では豚などの家畜にエサとして与えています。

※柔らかい生地の「さくら」や「プチ・プレジール」(酸凝固タイプのチーズ)は、カットをせずに型にすくい入れます。

⑥ 型詰め

ホエイを抜いたカードを四角い豆腐のような塊にし、チーズクロスに包んで木製のモールド(型)に詰めていきます。このとき、手早く作業するのがコツ。

⑦ 形の成形(プレス)

型詰めされたカードを積み重ね、約5時間プレスします。その間、何度も反転作業を繰り返し、形を整え、さらにホエイが抜けるのを促します。カードが隙間なく結着するように圧力や時間を調整します。こうして、徐々にチーズらしい姿に成型されていきます。

 熟成・磨き

成型されたカードを塩水に漬け加塩した後、熟成庫でじっくり寝かせます。表面を塩水でぬらしたブラシで磨き、反転を繰り返して、表皮をつくっていきます。若いチーズほど気を抜けません。ていねいにブラッシングして天然石の熟成庫で静かに熟成されるのを待ちます。